あっこのパフェが食べたいのよって話
実家から車で1時間弱のところにある洋食屋さん。幼い頃にお母さんと行ってた洋食屋さん。
当時の僕にとってそこは、自分一人では行けないとても遠い街の素敵なお店だった。
そこで、何度か大きなパフェを見たことがある。
記憶の中でのそのパフェは、とても大きくて、いつも大きなお兄さんお姉さんたちの笑顔に囲まれていた。
そんな大きなパフェを見たことがなかった僕は、そのパフェが本当に夢の世界のように見えて、すごいものがあるんだなぁって思ってた。
そして、それを取り囲む今の僕の年齢と変わらないぐらいの4〜5人ぐらいの集団は、当時の僕にはなんでもできるかっこいい大人のように思えた。
お母さんは、すごいねぇ、あんなに大きなの食べられないね、大きくなったらお友達と食べにきなね、って言ってくれていた。
今考えればその近くの学校にずっと通っていたお母さんは食べたことがあったのかもしれない。
でも、高校へ進学しても大学へ進学しても、そのお店に友達と行くような立地の学校に通うことはなかった。何なら、昔の方があのお店が近かったように感じる。
大学生になって、行動範囲が広がったとはいえ、わざわざ大学から遠く離れたそのお店に、一緒に行けるような友達はきっといない。そう思おうとしている。
そして今、僕は、当時の僕が憧れていたなんでもできる大人になった。
でも、今の僕は何にもできない。
だからきっと、今僕が見ている40代50代の大人たちもきっと自分がなってみたら何にもできないままだし、まだまだ子供だなぁとか思ってるのかもしれない。
そのくせ、「年取っちゃったからね」とか「若いうちならできたのにね」とか言ってできることの幅をどんどんと狭めていってしまっているかもしれない。
パフェだって、「若い子が食べるものだよね」とか言って心のどこかに何かを感じながらも笑ってるのだろう。
だから、そんなつまらない大人になる前に、まずは、小さな頃に憧れていたあのパフェを食べに行こうと思う。
実現できるかわからないけど、そんな小さなことくらい動いてみるのは簡単なはず。今の僕ならそのお店にいかない理由なんて、言い訳なんていくらでも用意できる。
でもそんなもの一旦どこかに置いておこう。
そしてそのパフェを目の前にすれば、普段普通にしてるだけで、だいじょうぶ?とか、疲れてる?眠い?とか言われる僕でも、あの頃見たお兄さんお姉さんと同じくらい、いやそれ以上に素敵な笑顔になれるかもしれない。
きっといつかそこに一緒に行ってくれた人は、僕より素敵な笑顔をそのパフェに、僕に向けてくれるだろう。そんなことも楽しみにして。
そして、小さな子供が隣に居合わせたなら、「大きくなったら素敵なお友達を作って、一緒に食べに来るんだよ」って、あの日の僕のお母さんみたいに優しく言ってあげたい。