不意に君を思い出す時があるよって話
狭い四角形の舞台の上で、僕の隣には君一人。
僕と君はいつだって二人きりだった。
僕たちはいつも謝ってばかりだった。
そしてそんな時にお互いに相手の目を見ることはなかった。
君が僕に謝った時、僕はただ前を見て「うん」と一言囁くだけで、それ以外に言葉はなかった。
始まりはどっちからだったのか。
君が僕を選んでくれたのか、僕が君を選んだのか、最初がどっちからだったのか、覚えてない。いつからかお互いがお互いを選んでいた。
そして、僕たちはいつだって相性がとても良かった。お互いがお互いの手の届かないところ、いて欲しいところにいつもいて、お互いの足りないところを補い合える僕たちの相性は誰が見ても良いものに違いなかった。
二人が追い込まれた時、いつだって君は僕のわがままで突飛な提案にのってくれた。
君が僕を肯定してくれて、君が僕をサポートしてくれて、そんな時の僕たちに敵はいないように思えた。
君はいつだって優しかった。
課題が終わらないって言って残っている僕の隣で、君は「自分も終わってないんだ」って言ってくれたのは、きっと優しい君の嘘だったけど、嬉しかった。
君があの人と付き合い始めたのさえ、二人の気持ちが、とかってそんなことはもちろんわかっている。わかっているけどどこかで僕のためなんじゃないかとかって、思ってしまっていた。
それくらいに君の優しさはいつも溢れていた。
毎回、終わると、汗だくの君はいつも「ありがと」って言って笑った。
最後の最後、僕の隣には他の人がいた。いつもと違う顔、いつもと違う声、いつもと違う姿、そのどれもに馴染めないまま、どこか違和感を感じたまま、僕のすべては終わった。
最後に君と何を話したのかなんて覚えていない。それくらい僕たちには何もなかった。大きな事件や喧嘩があったわけではない。周りの環境、自分自身の変化や時間の流れとともに、自然に、自然に終わっていた。
君とのラインを開くと、グレーの文字で「退出しました」の一行。
気づいた時には仲良くなっていて、いつの間にか始まっていた僕たちの関係は、終わる時もいつの間にか自然に、すんなりと終わっていた。
僕たちがこの先、連絡をとることは、きっとない。
友達に聞けばすぐに繋がれるというのに、どちらもそんなアクションを起こすことはないだろう。
僕たちの関係なんてそんなもんだ。
でも、僕はこうやって君のことを思い出す。
ふとした瞬間に、君との時間を思い出しては、自分にとって君と二人の時間はすごく楽しかったこと、
そして君もまた、楽しかった思い出として、青春の一コマとして、僕のことを思い出しているんだろう。
僕たちの関係なんて、きっと、そんなもんだ。
これまでも、これからも。
という、部活でペアを組んでいたお友達とのお話。